カテゴリー: マーラー:交響曲第2番「復活」名盤試聴記

マーラー:交響曲第2番「復活」の名盤はたくさんありますが、まずテンシュテット/ロンドンpoの1989年ライヴ。バーンスタイン/ニューヨークpoの1987年のライヴ。テンシュテット/北ドイツ放送交響楽団の1980年のライヴの3点が強烈な感情移入で感情を叩き付けて来るような名盤です。この3点の中で最も粘着質なのはバーンスタイン版です。ショルティ/ベルリンpoの1979年のライヴは完璧なシカゴsoとのスタジオ録音に感情移入も加えた名盤です。さらに、メータ/ウィーンpoの一筆書きで一気に演奏された名盤。シノーポリ/フィルハーモニアoはとてもバランスの良い演奏です。セーゲルステム/デンマーク国立soはゆったりとしたテンポで濃密な演奏です。新しいところでは、ゲルギエフ/ミュンヘンpoのYouTube動画などが挙げられます。

マーラー 交響曲第2番「復活」11

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

オットー・クレンペラー フィルハーモニア管弦楽団&合唱団

icon★★
翌年のライブで独特の境地を聞かせてくれたクレンペラー。
前年のスタジオ録音ではどんな演奏をするのでしょうか。

一楽章、ライブの時には拍子抜けさせられた冒頭部分だが、この録音では普通に緊張感と力を伴った演奏です。
あのライブとは全く別人のようなシャキッとした演奏に聞こえるのは、録音の違いなのか?
テンポの運びや誇張のない演奏はやはり、基本的な解釈は同じなのか?
金管の鳴らしっぷりなどはメリハリがあるけれど、基本的には翌年のライブと同一解釈のようです。
でも、ライブとは違うダイナミックさが魅力的な演奏になっています。

二楽章、以外に粘っこい。テンポを落とすところも遅くなるし、ffの部分でもかなり強めな感じで、この楽章の違う一面を見せられたようです。

三楽章、ここまでティンパニにはあまり強打させません。金管にはかなり吹かせているのですが、ティンパニの強打は、嫌いなのか?
やはり、ライブの演奏よりかなり粘っこい演奏です。あのライブはいったい何だったんだ?

四楽章、二楽章の粘っこさとは対照的に、あっさりした演奏。テンポも速い。クレンペラーはこの楽章にはあまり価値を見出していないのか?
独唱にもあまり感情移入させないように指示したような、欲求不満になりそうな演奏でした。

五楽章、この楽章はテンポがかなり動きます。クレンペラー自身、マーラーの交響曲の中でも好き嫌いがかなりあったようですが、この復活でも、楽章によって思いいれがかなりバラツキがあるのではいかと思えてくるのですが・・・・・・。
それぼど、作品に対する指揮者の立場が強かった時代の演奏ですね。デフォルメいっぱい、あまり気の乗らない楽章は、その気持ちをストレートに演奏に出してしまう。
サービス精神なんて、全くない。だからこそ、強い個性の主張があるのでしょう。
最近では、少なくなったタイプの演奏です。
最後は、ちょっとせっかちな終わり方で、ん~・・・・・・。

基本的に、タメがほとんどないので、素っ気無い演奏に聞こえてしまいました。

エリアフ・インバル フランクフルト放送交響楽団

icon★★
一楽章、予想していたよりもデッドな録音。それでもブラスセクションの伸びのある響きはさすが。美しい音で録られています。堅実な足取りで音楽は進んでいく。しかし、音の密度と集中力は凄いものを感じます。
細部まで克明に録られていますが、それを強調することなく、自然に!聴こうと思えば細部も聴けるというように、押し付けてくるようなことは決してありません。音楽の運びとしては、自然体な感じですが、作品の本質を描き出そうとするような、細部にわたって細心の注意を払って演奏しているようです。オケにも余裕があり、決して暴走するような危うさは全くありません。極めて均整の取れた演奏だと思います。

二楽章、わりとゆっくりめの演奏です。でも、ほとんどねばることなく、あっさり。今まで聞いてきた中でいちばんあっさりとした演奏でした。

三楽章、抑制のきいた演奏で、弦楽器を中心に音楽が作られていて、金管がかぶってくることがありません。バランスやアンサンブルにもすごく配慮した異色の存在かもしれません。

四楽章、オケの音色や録音の良さにも影響されているのかもしれないが、清廉潔白で毒々しいところなど一切ない。

五楽章、冒頭も十分にオケは鳴っているのだが、余裕も十分。こんなに余分な力が抜けている復活も初めてだ!淡々と進んでいるんだが、何か不思議な力が働いているような何とも言えない特別な感覚。バンダはかなり近め。テンポも速め。ところどころで、インバルの唸り声も収録されている。
インバルは、この作品から距離をおいて、これまでの名演奏にもとらわれることなく、極めて冷静に「復活」を再構築したのだ。これまで聴いてきた演奏とは明らかに一線を画している。

聞き手の予想を見事に裏切るテンポ設定。オケのパワーは凄く、最後には、盛り上がるのだが、手に汗握るような高揚感ではない。
この大曲をクールにシャープにやってのけたインバル。復活の演奏史に一石を投じたことは間違いないだろう。

ユージン・オーマンディ クリーブランド管弦楽団

★★
セルが鍛え上げたクリーブランド管弦楽団をオーマンディが指揮した貴重なライブ録音。
セルがベルリンpoに客演したときのエピソードとして残っているのが、当時ベルリンpoの主席ホルン奏者のゲルト・ザイフェルトに対して「君の音はダレている」と言ったという。
あの豊かな響きのザイフェルトの音をけなしたセル。
そして、オーマンディと言えば、あの有名なフィラデルフィアサウンドと言われた豊麗なサウンド。セルが好んだ引き締まった音とは正反対の、ちょっとグラマーなサウンドを好んだオーマンディがクリーブランドとどんな演奏を繰り広げるか楽しみな一枚です。ただ、オーマンディにはメッセージ性の強い作品はあまり得意ではないような固定観念を私が持っているので、そのあたりもどうなるのか楽しみです。
チューニング音から開始します。そしてオーマンディが入場して拍手も録音されています。

一楽章、これはクリーブランドの音だ!室内楽のような小さい編成で演奏しているかのような錯覚さえしてしまうほど、デッドで締まった音です。速めのテンポで音楽は進んでいます。録音のせいかffで若干混濁するような音です。すごく古めかしい音をきいているような感じがします。
オーマンディの指揮はほとんどの部分で速めのテンポをとります。やはり、水と油なのでしょうか。どうもしっくりこないようで、オーマンディ好みのサウンドが作れていないので、オーマンディ自身の作品に対する集中力も散漫なような感じがします。

二楽章、淡々と音楽は進んで行くのですが、音符に対する執着があまりないような、少し雑な演奏です。表現も淡白、音も雑で聴いていて楽しめません。消化試合をしているかのような・・・・・・・。

三楽章、この楽章もテンポは速めです。あまり乗れていないです。空気が緩い。張り詰めたような緊張感とは程遠い空気です。録音のせいなのでしょうか。

四楽章、ここでも淡白な音楽が流れて行きます、この直前に聞いたのがアバド、シカゴsoの演奏だったので、細部まで磨き上げた演奏とはあまりに落差が大きいです。この独唱も聞かせどころもなく、天国的にもならずに終ってしまいました。

五楽章、間やタメも私の感覚にはなじまない。
最後は盛大に盛り上がった。

オーマンディはこのコンサートで何をしたかったのだろうか。残念ながら私には共感できる部分はほとんどありませんでした。

レオポルド・ストコフスキー ロンドン交響楽団

★★
ストコフスキーといえば、有名なチャイコフスキーの5番の終楽章の全休符をカットしてしまうなど、強烈なキャラクターの持ち主というイメージなのだが、この復活ではどんな演奏をするのでしょうか。楽しみです。

一楽章、フワッとした弦のトレモロと自然体の低弦からの開始。かなりゆっくりとした足取りです。ホルンのゲシュトップが長めに演奏されている。
予想していたより、ねばることもなく、極めて自然な音楽の流れです。しかし、これまで聴いてきたCDでは聞こえてこなかった音がたくさん聞こえてきます。
少しオフぎみに録られてる録音がかえってギスギスすることなく、スケール大きく感じさせてくれます。全体がまとまって、美しい演奏です。
終始、ゆっくりした足取りと思っていたら、急激なaccelがあって、また何も無かったかのように元のテンポに戻るあたりはさすがストコと唸らせてくれます。
同じロンドンsoのバーンスタインの演奏も非常にテンポの遅い演奏でしたしすばらしい演奏でしたが、このストコの演奏は老獪さが加わって、力みが無い分、オケのまとまりが良くて美しい。アンサンブルは時折乱れるのですが・・・・・。

二楽章、この楽章は中庸のテンポでの開始です。アンサンブルはよく乱れます。
最晩年のストコフスキーの指揮は分かりにくかったのでしょうか。

三楽章、冒頭からaccel、この楽章は少し速いテンポです。ここでもアンサンブルは乱れまくります。しかし、不思議な求心力がある演奏で、聴いている方は散漫にはなりません。チューバがかなり存在感を発揮しています。
何か「間」の取り方に独特なところがあるようで、その部分でアンサンブルが乱れるようです。

四楽章、この楽章も速いです。もう少しゆっくりと音楽を味わいたいと思うのですが・・・・・。
どんな意図があって、このテンポを採ったのか、ちょっと理解できませんでした。ファスベンダーも歌いにくそうにしていたように感じたのですが・・・・・・。

五楽章、ん?バンダがもしかしてステージ上に居るのでは・・・・・・・?ついにストコ節か?
それにしても乱れる。
金管のコラールも速い。もっと味わいたいのに、なんでこんなに?
どうなっているのかと思うほど、すごいアンサンブルの乱れです。通常のロンドンsoでは考えられない。
やはり、バンダはステージ上だと思う。こんなにリアルなバンダは初めて聴いた。

やってくれましたストコ先生!ステージ上のパートよりもバンダの音がでかいなんて、ありえない!!!!。こんなことを大真面目にやれるのは、あなたをおいて他にはいません。
なんか、いろいろやらかしているようだ、今度スコアを見ながら聴いてみよう(^ ^)

ヴァーツラフ・ノイマン チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

icon★★
一楽章、速いテンポの冒頭。第二主題も速目のテンポであっさりとした表現です。展開部から一般的なテンポに落ち着きました。それでも少し速目か?ここまで、特にねばることもなく淡々と音楽が進んで行きます。金管の咆哮もなくただ淡々と流れて行きます。展開部の後半はパウゼをしっかり取ったり、テンポも遅くなりました。再現部からはまた速いテンポの演奏です。あまりにもあっけらかんとしていて拍子抜けします。

二楽章、この楽章も速目のテンポで行進曲のようにさえ感じます。アゴーギクもほとんどありません。

三楽章、ルーテの音が強調されています。クラリネットの滑らかなソロ。余裕を持って演奏されるトランペット。ダイナミックレンジが狭く平板な演奏が次第に不満になってくる。

四楽章、美しいコラール。音楽に合わせて、少しタメがあったり少し急いだりするようなことはほとんどありません。あくまでもインテンポ。独唱もあっさりと演奏されました。

五楽章、めずらしく遅めのテンポの冒頭。金管のトランペット以外が録音のせいか、奥まっていて突き抜けてこないので、演奏のダイナミックさが伝わってこないのか・・・・。とても近いバンダのホルン。この曲は消え入るような静寂と爆発するような最強音の対比が一つの聞き物だと思うのですが、バンダがこれだけ近いと、消え入るような静寂感は期待できません。また、テュッティの一体感が無く、怒涛のようなマッシブなパワーが伝わってきません。打楽器のクレッシェンドもテンポが速くあっと言う間に終ってしまいました。合唱の出だしもほどほどの音量で始まりました。こちらがぐっと身を乗り出して聞き入るような緊張感が感じられません。合唱が入ってからはたっぷりと演奏されましたが、何か集中力が無く散漫な感じがしました。

スヴェトラーノフ ロシア国立交響楽団

icon★★
一楽章、速いテンポの第一主題。第二主題の前ではテンポが遅くなりました。アゴーギクを効かせて表情豊かな演奏です。ティンパニのクレッシェンドも強烈!テンポもすごく動きます。かなり劇的な表現です。弱音部分は独特の雰囲気があってなかなかロマンチックです。強奏部分で突き抜けてくるトランペット!再現部の直前で大きくrit。強烈に吹きまくるブラスセクション。音楽の振幅も広くなかなか面白い演奏です。最後はこねくり回すように遅いテンポの演奏でした。

二楽章、主題のところどころにアクセントがつけられていて、ちょっと落ち着きの無い演奏です。終始何かに追われているかのようにせかせかとした感じでした。

三楽章、速いテンポですが表情はとても豊かです。

四楽章、今まで聞いたことのないような明るい声質のメゾ・ソプラノ。発音もおかしい、ロシア訛りか?歌い回しも何かしっくりこない。

五楽章、やはり突き抜けて来るトランペット。他のパートはバランスが取れていますが、トランペットだけが浮いてしまう位強く演奏されます。バンダのホルンが異様に近い。ファゴット、クラリネット、フルートと引き継がれる旋律の陰でバンダのホルンが演奏する部分はすごくテンポが落ちて、バンダのホルンはほとんど聞こえないくらいでした。金管のコラールはバランスの良い演奏でした。展開部からは金管、打楽器大活躍です。打楽器のクレッシェンドの直後のトロンボーンも下品に吹きまくる。バンダのトランペットはミュートをしているようだ。極端に音量を落とすことなく歌い始める合唱。安っぽい音のトライアングル。突然合唱が音量を上げて、音を短めに演奏しました。普段聞き慣れている復活の演奏とはかなり違います。緊張感の無い合唱ですかなりアンサンブルが乱れます。二重唱がかなり強調されて浮き上がっていました。テンポもかなり遅いです。オケと合唱のアンサンブルも乱れます。最後もトランペットが強調されていました。全体に緊張感と統一感に欠けた演奏だったように思います。悪く言うと、支離滅裂!

ヘルベルト・ケーゲル ライプツィヒ放送交響楽団

icon★★
一楽章、第一主題にもちょっとした動きがあります。第二主題もテンポが動きました。テンポはすごく速くなったりすごく遅くなったり急展開します。展開部の第二主題は平板な印象でした。ふくよかさは無く細身のホルン。フルートの第二主題はちょっと変わった歌いまわしでした。展開部の終わりにかけてはかなりテンポが速くなりました。ティンパニの強打で他のパートが聞こえないくらいになります。再現部の第二主題はとても美しかった。テンポはすごく動いて積極的な表現をしようとしているようなのですが、何を意図しているのかちょっと分からない。

二楽章、とても落ち着いた雰囲気です。フルートのミス。これまでミスは散見されました。ライヴなのである程度はいたしかたないでしょう。途中アッチェレランドしたのですが、パートが変わるごとに急に早くなるような統一感のないアッチェレランドでした。速くなるところが速すぎて落ち着かない。ケーゲルは即興的にテンポを動かしているのか、オケのアンサンブルが崩れる場面もあります。

三楽章、硬く余韻のないティンパニ。ヴァイオリンも木管も歌います。金管の音量が不足しているのか、トランペットなども届いて来ません。ティンパニに完全に負けています。金管が詰まったように前に出てこないので、音楽の起伏に乏しく、平板な印象になります。

四楽章、とてもマイクに近い独唱。アルトらしい太い声です。最後まですごい存在感でした。

五楽章、硬いティンパニの上に初めて全開のトランペットが響きました。すごくナローレンジで古いラジオのようなバンダのホルン。良く歌う木管の第二主題。トロンボーンはビブラートを効かせていたが途中で音が途切れてしまいました。トロンボーンの一番だけが浮き上がるコラール。展開部ではかなり熱くなってきたような雰囲気が感じ取れます。ただ、ミスは頻発します。再現部もティンパニが威勢よく、トロンボーンが隠れ気味でした。静まってからのバンダが出てからは凄く速いテンポです。オケのマスの響きが硬く、編成が小さいように感じてしまい、スケール感に乏しい演奏になってしまっています。比較的大きめで入った合唱。そもそもこの演奏には消え入るような弱音の緊張感はありません。速いテンポでどんどん進んで行きます。最後は大絶叫でしたが、せっかちで集中力もあまり高くなく散漫な演奏だったように感じました。

ブルーノ・ワルター/ニューヨーク・フィルハーモニック

icon★★
一楽章、とてもシンプルな第一主題。ホルンのゲシュトップなども聞こえずとてもすっきりと整理された演奏に感じます。第二主題にもすんなりと入り、しかもテンポが速くあまり思いいれを感じさせません。テンポは動きますが基本的には速めのテンポで複雑に絡み合う要素もバッサリと切り捨てて演奏しているような感じがします。展開部の第二主題も速いテンポです。径の小さいシンバルがこの曲に不釣合いです。オケも熱くなることはなく、冷静に音楽が運ばれて行きます。ドラがほとんど聞こえない。聞こえてもとても軽い音であまり効果がありません。

二楽章、穏やかで伸びやかな旋律が幾重にも重なって広がって行きます。中間部も刺激的な事はなく、暖かく穏やかです。中間部の再現でもアクセントなども丸く角を落としたような演奏で極力刺激を避けているようです。

三楽章、ソフトなティンパニ。二楽章とは打って変わってとても表情の豊かな演奏で、木管や弦のアクセントの表現も厳しいです。でも全体にはソフトで暖かい演奏です。金管も限界近い強奏はしません。かなり余裕のある音量の範囲で柔らかさを保っています。編成の大きさの割りに小さいシンバルを使っているのがとても不自然で気になります。ルーテもほとんど聞こえませんでした。

四楽章、金管の間奏はテンポを速めました。独唱は太く柔らかい声です。中間部もテンポを速めてタメなどもなくあっさりと進みます。独唱は最後少し苦しそうでした。

五楽章、絶叫する第一主題。これまでの楽章とは様相が違うようです。距離はあるけれどあまり間接音を伴わないバンダのホルン。第二主題は非常に抑えた音量で静かに演奏されます。バンダのホルンの高音部分はトランペットで代用しました。金管のコラールは美しく歌いました。展開部もオケはかなり頑張っています。打楽器のクレッシェンドはすごく短くあっと言う間でちょっとあっけない感じでした。行進曲調になったところでトランペットがかなり強奏しますが、明らかに二人で演奏しているのが分かるようなアンサンブルです。バンダのトランペットはステージ裏にいます。「巨人」ではミュートで代用したのはなぜだったのでしょう。再現部でもかなりの絶叫です。舞台裏のトランペットも間接音が少ない録音で、奥行き感があまり感じられません。テンポが速めで間を取ることもほとんど無いので、表現がとても淡白に感じます。すごく抑えた合唱が次第に音量を上げて行き、独唱が入ります。合唱の合間に入るオケがとても太く存在感の大きい演奏です。合唱の部分でアッチェレランドをかける場面もありました。バランス的にはトランペットが強調されていて、トランペットが登場すると他のパートとのバランスが崩れてしまいます。

マーラーの複雑なオーケストレーションの細部をバッサリと切り落としてしまって、表現も淡白で、ワルターがこの作品に共感していたのか疑問に感じました。

アラン・ギルバート/ ニューヨーク・フィルハーモニック

アラン・ギルバート★★
一楽章、ドゥダメルの演奏に比べるとすごく人数が少ないようなコンパクトな響きの演奏です。きっちりと整ったアンサンブルですが、音楽が前に進むような力強さはありません。第二主題に入る前に少しテンポを落としましたが淡々と演奏される第二主題。展開部の第二主題はさらにテンポを落として演奏されましたが、音は短めに演奏されていて、メロディのイメージとは合わない表現でした。陰鬱な雰囲気が全体を支配しています。フルートの第二主題はとても良く歌いました。浅い響きのホルン。展開部が終って拍手が起こります。ギルバートの指揮は、特に作品への共感を表すような演奏でも無く。かと言って作品の構造をあからさまにするような演奏でも無く、中途半端な印象を受けました。

二楽章、速めのテンポであっさりと演奏される主題。テンポも大きく動くことはありません。中間部でも他のパートとは違い朗々と歌うフルート。トランペットやトロンボーンに比べると極端に奥行き感の乏しいホルンが異質に聞こえます。二楽章が終って拍手です。

三楽章、あまり強打しないティンパニ。強弱の変化などの表現は控え目です。鋭いトランペットの強奏。強奏部分ではニューヨークpoのパワーが炸裂しますが、弱奏部分の表現が乏しく緩い演奏に感じます。

四楽章、穏やかな歌い始め。この演奏同様、あまり感情が込められていない独唱。最後まで控え目でした。

五楽章、軽く演奏された第一主題。打楽器のクレッシェンドも控え目でした。残響をあまり含まないバンダのホルン。木管の第二主題は僅かにスタッカート気味です。良く歌う金管のコラール。展開部の手前で少しテンポを落としました。テンポの動きもあまり無く、起伏も大きくはありません。表現の濃厚さもありませんし、響きも浅く音楽が少し平板な感じがします。ゆっくりとしたテンポの再現部。比較的大きめの音量で歌い始める合唱。最初のソプラノ独唱が入る部分では合唱を抑えて浮き上がらせましたが、合唱とのハーモニーが聞き取れませんでした。合唱の合い間に入るオケの演奏に流れが無く音楽が停滞しているようです。クライマックスでは充実した響きを聴かせてくれました。

感情移入もあまり感じられず、音楽の起伏にも乏しい演奏で、ちょっと残念な演奏でした。
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オトマール・スゥイトナー シュターツカペレ・ベルリン

スゥイトナー★★
一楽章、ためたエネルギーを放出するように勢いを付けて開始したトレモロ。エネルギー感のある第一主題。スゥイトナーの演奏らしく、透明感の高い、端正な演奏です。弦もとても美しい。とても堅実な足取りです。展開部の第二主題もあっさりと端正です。作為的な部分は全く無く、作品自体に語らせるような演奏スタイルです。細身で艶やかなヴァイオリン・ソロ。展開部の第一主題の後はかなりテンポを速めています。時折テンポを落とす場面もありますが、そこはスゥイトナー、決してドロドロにはならず品良く冷静な演奏をしています。再現部はゆったりとしたテンポで美しく歌います。まるで、この世の未練を表現しているような非常に美しい演奏です。コーダもゆっくりと進みます。最後は早くなって終わりました。

二楽章、速めのテンポであっさりと演奏しています。作品をこねくり回すようなことは一切しません。とてもストレートな表現の演奏です。繊細で美しい弦。

三楽章、軽いティンパニ。極端な強弱は付けずに、すんなりと流れていく主題。控え目で奥ゆかしい表現です。作品に対して構えることもなく、これ見よがしに金管を咆哮させることもなく、自然体でとても落ち着いた演奏を続けています。

四楽章、陰影を伴った独唱。遠くから響くような金管のコラール。

五楽章、整然とした第一主題。かなり近くて音量も大きいバンダのホルン。速めのテンポで演奏される第二主題。トロンボーンも遠く美しい。金管のコラールも遠くから響くような控え目な表現です。展開部でも絶叫することはなく、とてもバランスの良い演奏です。打楽器のクレッシェンドも短くあっさりとしていました。間接音を含んで豊かな響きのトランペットのバンダ。比較的大きめの音量で始まった合唱。合唱から浮かび上がる独唱も飛びぬけたバランスにはならず、合唱の響きから僅かに顔を出す程度でした。オケと若干ズレる男声合唱。最後のクライマックスも圧倒的な音量感は無く、バランスと美しさを重視した演奏のようです。

真面目、正直な演奏で、ちょっと退屈でした。
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ヴァシリス・クリストプロス/アテネ国立管弦楽団

★★
一楽章、低域が薄い第一主題。第二主題も速めのテンポであっさりと進みます。展開部の第二主題はテンポを落としましたが、感情を込めると言う表現ではありません。再現部の前も軽い感じでした。とてもあっさりと淡々と進む音楽です。

二楽章、この楽章も速いテンポで、どんどん進みます。速いテンポをさらに煽ります。こんなにテンポが速くあっさりした演奏は初めてです。

三楽章、この楽章は速くありません。表情は付けられていますが、強弱の変化も中途半端で、迫ってきません。アンサンブルの乱れもあります。また、細部の曖昧な部分もあります。表現はしていますが、音に力が無くとても淡白に聞こえます。

四楽章、この楽章も速めのテンポで、深く感情を込めることはありません。独唱の声質も浅いです。

五楽章、金管の第一主題が強く、他のパートはあまり聞こえません。打楽器のクレッシェンドも弱かったです。大きめの音量のバンダのホルン。あっさりとした第二主題。バンダのホルンの最高音はトランペットで補強されていました。壮大な展開部。打楽器のクレッシェンドの前のトランペットは不安定でした。再現部の前のバンダの部分も速かった。合唱の入りも思いいれの無いかのように速いテンポであっさりとしています。ちょっと癖のあるソプラノ独唱。クライマックスも速いテンポです。オケのパワーもそんなに無く、あまり感動もありませんでした。

とても淡々とした速いテンポで、思い入れも無い演奏で、オケの響きにも取り立てて美しいものも感じられない演奏で、あまり惹かれるところはありませんでした。
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ウィン・モリス/シンフォニア・オブ・ロンドン

モリス★★
一楽章、すっきりとしていてバネのある第一主題。鋭角な響きで第二主題も感情移入も無くストレートに音楽が進んで行きます。低弦の三連符は速いテンポで始まり次第にテンポを落として行きました。展開部の第二主題もあっさりとしていて特に美しい響きではありません。第二主題がフルートに出る前はゆっくりなテンポになりましたがやはり感情が込められた感じはありません。第一主題が出てから大きくテンポを落とし再現部まで続きます。モリスの演奏は8番と9番でも思ったのですが、必然性が無く遅い気がします。再現部からコーダにかけても遅いです。

二楽章、この楽章は遅くありません。自然なテンポで進みますが、やはり感情を込めた歌はありません。最後の主部の再現のピツィカートもゆっくり始まってその後少しテンポを上げました。大きな表現や仕掛けは無いのでサラッと聞き流すことはできますが、作品の性格からして、このような演奏で良いのか、ちょっと疑問になります。最後もすごく遅くなりました。

三楽章、ソフトなティンパニ。この楽章も遅めのテンポです。中間部のトランペットはスッキリとした爽やかな響きです。テンポが遅めな以外は作品をストレートに表現していて聞きやすい演奏ではあります。シンフォニア・オブ・ロンドンと言うオケの実態も分かりませんが、聞いている分にはなかなか上手いです。

四楽章、響きが薄い金管のコラール。

五楽章、ドラが鳴ってから間を置いて金管が入ります。この金管の主題もとても遅いです。距離はありますが、残響をほとんど含まないバンダのホルン。ここから少しテンポは速くなり普通のテンポになります。第二主題も普通のテンポですが、やはり感情移入のあるような表現はありません。展開部の直前のクレッシェンドでスネアのロールを一旦止めてまた入り直します。展開部もゆったりとしていて、絶叫もしません。極端に遅い部分はありますが、演奏自体は整っています。再現部冒頭もかなり余力を残した演奏です。比較的大きめに入る合唱。テンポはここまでの演奏に比べると速めです。最初の独唱が入ってしばらくするとホルンがマルカートぎみに強めに入ります。合唱は次第に音量を上げます。クライマックスはここまでたびたび遅いテンポを取ってきたのに、以外にあっさりとした速めのテンポです。

極端な遅いテンポを取る部分もあったりしましたが、特に大きな表現があったりはしませんでした。最後のクライマックスきその遅いテンポで濃密な演奏を期待しましたが、以外にも速めのテンポであっさりとした演奏で、何を表現したかったのか分かりませんでした。
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ジャン=クロード・カサドシュ/リール国立管弦楽団

カサドシュ★★
一楽章、ソフトな弦のトレモロ。第一主題も落ち着いた割と穏やかな演奏です。音楽はあまり大きな起伏が無く平板な感じです。第二主題もほとんど表情が無くあっさりとした演奏でした。展開部の第二主題は提示部よりも少し表情がありましたが、音色は大きな変化はありませんでした。フルートに第二主題が出る前のミュートをしたトランペットでかなりゆっくりになりました。それにしても厚みの無い響きです。再現部の前のリズムはとても軽い感じでした。最後はゆっくりでした。

二楽章、ゆっくり目ですが、やはりほとんど表情の無い主題。中間部もあまり大きな表現は無く淡々と流れて行きます。遅めのテンポで作品の美しさを聞かせようとしているようですが、オケがとても美しい演奏をしている訳ではないので、今ひとつ魅力を感じません。

三楽章、速めのテンポですが、滑らかな感じはありません。強弱の変化も緩く締まった感じもありません。アンサンブルも緩くバラバラになりそうなところもありますが、大きな主張が無い分サラッと聞き流すことはできます。この楽章はテンポの動きは結構あります。

四楽章、offぎみで少し痩せた声質の独唱。

五楽章、あまり印象に残らない第一主題。音量が大きめのバンダのホルン。第二主題は少し感情が込められていました。明るい音質のトロンボーン。暗い音質のトランペット。大きく歌う金管のコラール。展開部は僅かに抑えた感じで、シンバルが小節を間違っています。金管のブレスで音が途切れることもあります。再現部も全開ではありません。その後の弱音部分でもアンサンブルは怪しいです。こもった響きのバンダのトランペット。静かに歌い始める合唱。オケと合唱のバランスを保っているようでオケは絶対に全開にはなりません。

かなり軽い演奏でした。表現を押し付けることも無く、全開にもならない演奏で、イヤみはありませんでしたが、アンサンブルの乱れは結構ありました。
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マーラー 交響曲第2番「復活」12

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

ギルバート・キャプラン ロンドン交響楽団

icon★☆
復活のエキスパート、と言うべきか。復活しか指揮しないキャプランによるデビューCDである。
ストコフスキーの復活のコンサートに衝撃を受けて、復活を指揮することを夢見、それを実現したすばらしいモチベーションの持ち主である。
一方で経営者としての才能もあり、このCDはベストセラーとなった。
アマチュアの弱みを「復活」に特化させることで、見事に補ってベストセラーを生み出すと言う、プロモーションとしても、さすが。
また、スコアとパート譜の矛盾点などについても徹底的に研究しているなど、まさにプロ裸足のところも持っている。
演奏の方は、ロンドンsoの上手さも手伝って、特に不満のある演奏ではないが、印象にも残らない。

一楽章から、淡々と進む、オケも力むような部分は皆無と言って良いほど楽に演奏しているようにきこえる。テンポも大きく揺れることもなく、これといった聴き所もない。
クラッシュシンバルが異常に近い、サスペンドシンバルは適度な位置にいるのに・・・・・。

二楽章も淡々と進む。オケの楽員もキャプランの解釈に共感していないのではないだろうか?もっと凝縮された緊張感があってもよさそうなものだけど・・・・・。

三楽章も速めのテンポで進む。表現の振幅があまりないので、演奏と向き合うような聞き方ではなく、BGM的にながれて行く。テンシュテットやバーンスタインのような強烈な演奏の場合は、聞く側にも、それなりの緊張感も要求されるが、キャプランの演奏の場合、なんとなく音楽が流れている感じなのだ。この楽章でも、オケは決してムリはしない。余裕の演奏。

四楽章、美しい独唱だ。

五楽章もオケはムリをしないし、音の密度も希薄に感じてしまう。どこをとっても、すでに他の演奏で聞いた範囲内に収まっているので、聞いていて「おっ!」とか「え?」とか、良い意味でこちらの予想を裏切ることがないのだ。終始安全運転が続く。キャプラン自身が百戦錬磨の指揮者ではないので、オケを引きずり回すような指揮を期待するのもムリではあるのだが、やはり、ちょっと物足りない。
そして、もっとも好きになれないのは、オケの音の密度が薄いからなのだ。これは、楽員たちがキャプランを尊敬していないからではないかと思う。散漫で集中力に欠ける演奏なのだ!
これが、彼の芸風だと言われればそれまでなのだが、ウィーンpoとの再録音も出てはいるが、買う気には到底なれない。
キャプランの作品への共感も分かるし、いろんな研究をしていることも分かる。
しかし、この共感は、マーラーと同等の立場(作曲者と演奏家)での共感ではなく、マーラーの奴隷になっているのではないかと感じてしまうのは、私の聞き方の問題だろうか。
作品への共感があり、指揮者の強い意思が、楽員に高度な要求をして、そのせめぎあいの中から名演奏が生まれてくるのではないだろうか。
マーラーの作曲意図を忠実に再現しようと言う気持ちが強すぎて、キャプラン自身の主張が感じられない。キャプラン自身が感性に従って演奏したのではなく、「楽譜上、こうしなければならない」というのに支配されていて、聞いていてこちらが感情的に盛り上がらないのだ。

これだったら、楽譜の指定を忠実にパソコンに打ち込んでコンピュータ演奏させれば良かったのではないかとさえ思う。その方が完成度は高かったであろう。
録音は、クラッシュ・シンバルが強調されていて、かなり強烈です。また、中低域が薄いために響きが渇き気味に聞こえてしまうのも惜しいところです。

ルドルフ・ケンペ/ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団

ケンペ★☆
一楽章、ゆっくりと穏やかな第一主題。金管が副付点を演奏するころにはテンポが速くなっていました。第二主題もあっさりとした表現です。角張った部分の無いとても滑らかな演奏ですが、何か物足りないような感じもします。展開部の第二主題は凄く抑えたヴァイオリンの第二主題から始まりました。金管も軽く演奏させていてとてもソフトです。フルートに第二主題が現れ、続くヴァイオリン・ソロはねばりがあり艶やかでした。一般的な荒れ狂いのた打ち回るような第一楽章のイメージとはかなり違います。静かで穏やかで屈折していません。

二楽章、この楽章でも穏やかな弦の主題です。この演奏は「動」と「静」で言うならば、まさに「静」です。動きや躍動感など、生命観はほとんど感じることはできません。

三楽章、軽いティンパニ。表情が付けられたヴァイオリンの主題。遠くにいるクラリネット。音楽にはそれ程起伏もなく、比較的一本調子で流れて行きます。金管も遠くに配置されており、中間部のテンポが遅くなる部分のトランペットはとても美しい演奏でした。最後はテンポを落としてたっぷりと演奏しました。

四楽章、とても心のこもった独唱です。

五楽章、インパクトの後すぐに音を消した銅鑼。録音のせいなのか、常に金管は控え目に響きます。そのために音楽に深い彫りが刻み込まれることが無いように感じます。遠くで広がるホルンとステージ上の木管の対比はなかなか良かったです。テンポもほとんど動かず、タメや間などが無いので、さらに平板に感じます。展開部のホルンは肩透かしでした。再現部の前あたりからトランペットがかなり強く吹くようになって来ました。チェリビダッケが首席指揮者に就任してからの、透明感の高く非常に精度の高い演奏とも違います。かなり大掴みな演奏で、細部にまで神経が行き届いた演奏ではありません。すごく抑えられた合唱です。合唱が入ってからはかなりたっぷりとした表現です。終盤で一気にテンポを速め次にritしましたが、最後で金管のふんばりが効きません。何か間の悪い演奏だった気がします。
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ウイリアム・スタインバーグ/ボストン交響楽団

スタインバーグ★☆
一楽章、低域が薄く、しかももぞもぞとした第一主題。速いテンポでタメも無く割と無造作に進みます。第二主題も思い入れの無いような速い演奏です。展開部は幾分テンポを落として演奏しますが、やはりあっさりとしています。速いテンポだと思ったら途中で急にテンポを落としたりするところは、一時代前の演奏だなと感じさせます。第一主題が出た後はゆっくりです。オケは咆哮するようなことはありませんが、ティンパニは激しく叩きます。再現部の前もかなり速かったです。コーダの前はねっとりとした表現で味わい深いものでした。

二楽章、ほとんど間を取ることなく、息の長い音楽を演奏しています。中間部も三連符の刻みが前へ前へ進もうとします。二回目の主部は速いですが、チェロの対旋律を十分に聞かせてくれます。中間部の再現もすごく速くあまり味わいなど感じません。

三楽章、少し表情のあるヴァイオリンの主題。中間部でも金管は咆哮することなく、淡々と前へ前へと進みます。オケの淡々とした表現とは対照的にティンパニは遠慮なく強打します。

四楽章、この楽章も速めのテンポで淡々と歌われます。

五楽章、前進する勢いのある第一主題。速いテンポのままバンダのホルンに入りました。ハープの演奏も慌ただしい。第二主題もかなり速いです。展開部の前は少し遅かったのですが、展開部に入るとまた、かなり速いテンポでどんどん前へ進みます。推進力はかなり強い演奏です。バンダのトランペット、ホルンはかなり遠くデッドです。再現部冒頭も落ち着いた演奏です。これまでのテンポとは違い穏やかな合唱の導入でしたが、オケだけになる部分でまたテンポを速めました。感情を込めたアルト独唱。ほとんどタメもなくクライマックスになります。

前へ前へと進む推進力はありましたが、かなり淡泊な演奏で、何かを表現しようとしていたとは思えませんでした。
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朝比奈 隆/大阪フィルハーモニー交響楽団 1995年大阪ライヴ

朝比奈★☆
一楽章、かなりの残響を含んでいてふくよかな低弦の第一主題。第二主題は大きな表現では無く、いつもの自然体です。特に表現と言うようなものは無く自然に流れて行きます。アップされている音源はかなり歪んでいて聞き取りづらいです。テンポの動きも無く、オケもストレートに演奏しています。ただテンポは遅めでどっしりとした歩みですが、あまり表現や主張が無く、なんとなく演奏しているような印象です。

二楽章、かなり力強く足を踏みしめて進む感じです。舞曲風と言うより行進曲のような感じさえします。ドタバタととても活発です。

三楽章、強烈に歪むティンパニ。豊かな表現で歌うクラリネット、弦も活発に動きます。オケが乗って来たのか、かなり豊かな表現の演奏になって来ましたが、アンサンブルはかなり悪いです。

四楽章、豊かな残響を伴った独唱はとても柔らかく心地良く響きますがかなり歪みます。

五楽章、ゆったりとした第一主題ですが、歪みっぽくてエネルギー感が伝わって来ません。色彩的な動きが無く平板に進みます。ホルンの動機からもストレートです。第二主題もあっさりとしています。展開部はスケールの大きな演奏のようですが、ここも歪みであまり良く分かりません。あまりの直球勝負で、作品によってはそれが魅力になりますが、この曲では少し退屈に感じます。演奏が崩壊しそうになる部分もありました。再現部の前後などはかなり間延びした感じでした。かなり大きな音量で入る合唱であまり緊張感はありません。二重唱の部分はかなり遅かったですが、クライマックスへ向けてテンポを速めました。それでも最後は感動的に曲を閉じました。

ストレートな表現で、ほとんど細工も無く作品への思い入れも感じられない演奏で、間延びした部分や崩壊しそうになってしまう場面もありましたが、最後は感動的に終わりました。
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ロリン・マゼール/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

マゼール★☆
一楽章、鋭くはいるトレモロ。ふくよかな低弦の第一主題。ゆっくりと進行します。シンバルが入る前に大きなタメがあったりします。細くちょっとギスギスした感じの第二主題。展開部の第二主題もフワッとした柔らかさが無く現実的です。展開部もゆっくりと進みます。ウィーンpo独特の羊皮のティンパニのベタッとした響き。音楽が前に進もうとする力がありません。再現部のホルンのトリルの部分でも大きなタメがありました。マゼールらしい仕掛けです。

二楽章、ゆっくりと美しく優しい主題。二回目の主部もチェロと絡んでうっとりするような美しさです。さすがにウィーンpoです。この楽章も前へ進む力が無く、音楽が停滞しているような感じがあります。終わりに向けてさらにテンポが遅くなって行きました。

三楽章、マレットがヘッドに触れる瞬間が際立っているティンパニ。遅いテンポで少し寂しい主題。強弱の変化はあまり大きく付けられていません。活発に動くイメージのある楽章ですが、とても静かで穏やかです。この楽章でも音楽は前に進もうとはしません。

四楽章、独唱はジェシー・ノーマンなのか、やはりソプラノにこの音域を歌わせるのは少し無理があるように感じます。声の質が細いと感じます。

五楽章、トランペットが長い音を強く演奏しますが、他のパートはそれ程大きなエネルギーを発散する感じではありません。良い距離感で残響も豊かなバンダのホルン。マゼールは時に大きな仕掛けをしますが、一つ一つのフレーズを大きく歌うことはありません。第二主題もほとんど表情はありませんでした。フルートとイングリッシュホルンの不安な動機と金管のコラールの間に出るティンパニが強烈でした。展開部の前でも大きくテンポを落としました。打楽器のロールのクレッシェンドの後の短い音もゆっくりでした。このような大きな仕掛けがある割りに、大きな歌は無く、作品への共感は無いのではないかと感じます。テンポの大きな動きも自然に出てくるものでは無く、作為的で計算高い感じがします。再現部も強いエネルギーは無く古風な音がしています。バンダのトランペットのファンファーレはお風呂の中で演奏しているような残響です。静かに歌い始める合唱。バーンスタインがテンポを落としたクライマックスを逆に速く演奏しました。トランペットだけが突き抜けて強いのですが、合唱も含めたほかのパートはあまり熱くなっていない感じです。

マゼールらしい仕掛けは随所にありましたが、作品への共感は感じられませんでした。オケの響きも薄く古風で、前へ進むエネルギーも希薄で、あまり魅力のある演奏ではありませんでした。
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マーラー 交響曲第2番「復活」13

たいこ叩きのマーラー 交響曲第2番「復活」名盤試聴記

小澤征爾 ボストン交響楽団


小澤征爾と私の相性が悪いのか、小澤のCDを聴いて感動したことがないのです。

日本を代表する巨匠であるのに・・・・・・・。

私にとっては、肩透かしの連続で、意外性を求める人には良いかもしれませんが、それが納得できるかは、個別の感性なので、何とも言えません。

小澤独特の感性があるのだと思うのですが、私にはどうもしっくりこないのです。

小澤には他の人にはない感性があって、それはもしかしたら日本的な歌いまわしや間の取り方だったりしているのかも知れません。

そして、それは日本人よりも欧米人にとって斬新な音楽に感じるのかも知れません。

独特の復活であることは間違いないので、感性が合う人には、すばらしい演奏なのではないかと思います。

ロリン・マゼール クリーブランド管弦楽団

マゼール
一楽章、客席で録られたものか、かなりoffな感じで客席のノイズがリアルです。
比較的遅めのテンポでしっくりと音楽が進んで行きます。ffの部分では強烈に歪みます。
音楽自体は淡々と進んでいる感じで、マゼールらしいアクの強い演奏は今のところ感じません。
ライブらしく、次第に音楽に熱気を感じるようになってきました。マゼールらしい大げさなritなどもあります。

二楽章、マゼールの演奏なので、コテコテの演奏を想像していたのですが、かなり洗練された音楽です。
ただ、録音が悪いので細かいニュアンスなどは分かりにくいし、音色も良いのか悪いのか判断できません。

三楽章、マイクはひざの上にでもあるのだろうか?
服がマイクに触れるような音や何かがマイクの前にあって音を遮断するような場面もありで、音楽に集中できない。
ffでは完全に歪んでいるので、5楽章が心配です。
音楽がどうのこうのと言えるような録音ではありません。

四楽章、速めのテンポ。独唱の思い入れのない出だしにはがっかりさせられます。

五楽章、打楽器の一撃に録音機材が負けています。冒頭からすごい歪みです。
この録音でマゼールの音楽を評価するのはマゼールに対して失礼だと思います。
レビューとして、このCDの購入を考えている人への判断材料として、★はつけますが、このCDに関しては、演奏よりも録音に対する評価だと思ってください。
音楽を判断できるような録音ではないです。
ただ、マゼールの指揮は大見栄を切るところもないし、大きな仕掛けもありません。とても純粋な音楽のように感じます。
金管も良い音みたいだし、合唱も壮大なクライマックスを築いているようなのですが、とにかく録音が良くなったり悪くなったりするので・・・・・・・。

最後はすごくクリアーな音になりました。なんで最初からこの音で録ってくれなかったのかと悔やまれます。

井上喜惟 シャパン・グスタフ・マーラー・オーケストラ

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一楽章、アマチュア・オケですが、なかなかの始まりです。アンサンブルの乱れは多少あります。個々の練習量の差なのか、テンポに付いていけないパートがあったりして、統一感に欠く演奏です。フルートやヴァイオリンのソロは上手かったです。展開部以降はすごくテンポを落として演奏しました。井上の指揮はテンポを大きく動かして劇的な表現をしようとしていますがアマチュアの限界か、ffで突き抜けてくるような金管の爆発がありません。

二楽章、ゆったりとしたテンポで始まりました。弦が揃わない。大勢で演奏しているのが如実に分かる演奏です。

三楽章、この楽章も遅めのテンポです。途中テンポが速くなったりもしますが、アンサンブルの乱れが気になり、音楽を聴いている感覚ではありません。テンポの動きからすると井上が表現したいことはたくさんあるのだと思いますが、オケが付いていけないのが残念なところです。

四楽章、すごく遅い開始です。すごく表情豊かな独唱ですが、合いの手に入る金管が無表情でバランスも悪く違和感があります。

五楽章、金管が弱いしアンサンブルの乱れも大きい。ホルンのバンダも複数で吹いているのが分かるし、表現も変でした。アマチュア・オケなので、練習時間にも制約があるのは当然ですが、この演奏は明らかに練習不足だと思います。バンダのトランペットは良かった。合唱は表情豊かです。合唱が入ってからの終盤はなかなか良かったですが、この演奏は出演したメンバーの内々で楽しむCDで、市販されるべきではないと思いました。

リボル・ペシェク/チェコ・ナショナル交響楽団

ペシェク
一楽章、あまりスピード感の無い第一主題。バランス良く控え目な金管。第二主題へもテンポを変えずすんなり入りました。低弦の三連符を含むリズムも速いテンポであっさりと進みます。展開部の第二主題はテンポを落として美しい響きでした。続く木管も美しい演奏です。深く感情移入することはなく、テンポもほとんど動きません。再現部の前も音を短めに演奏してあっさりと終りました。感情を吐露するわけでもなく、かといって明晰な演奏でも無い感じで、中途半端な印象でした。

二楽章、この楽章も速いテンポであっさりと進みます。アゴーギクを効かせて歌うこともありません。テンポはほとんどインテンポです。楽譜の指示があるところだけテンポが動きます。最後のAで少しテンポを落としましたが、これだけ無表情の演奏もめずらしい。基本的に楽譜に書いてある以上のことはしない指揮者としてはハイティンクなども同じ部類に入るのかもしれませんが、ハイティンクの場合は奥の深さやスケールの大きさがあります。しかし、このペシェクの場合、奥の深さやスケール感などは感じません。

三楽章、良い鳴りのティンパニ。この楽章も速いテンポで主題に入る前にさらにテンポを煽るように上げました。金管の強奏部分で音を短めに演奏するのが特徴といえば特徴です。全てが、これまでに聴いてきた演奏の範囲内で、想定外は起こりません。また、オケの音色もとりたてて美しいわけでも無いので、この演奏の魅力を探すのが難しいです。

四楽章、あっさりとそっけない独唱。金管のコラールはトランペットが浮き上がって颯爽としています。透明感の高い美しい独唱です。

五楽章、深いところから響くドラ。やはり音は短めの金管の第一主題。元気の良いバンダのホルン。節度のある演奏と言えば良いのか、決して踏み外さない安全運転です。第二主題のトロンボーン、トランペットはビブラートをかけた独特のものでした。切迫感のあるような踏み込んだ表現はありません。展開部の金管も音は短めです。ピーンと張るような緊張感もありません。生ぬるい空気が漂っているような感じがします。金管が咆哮することもありません。程ほどの吹きやすい音量で演奏しているような感じです。静かに始まった合唱。装飾音符があるような独特のソプラノ独唱でした。合唱はかなりの音量で歌いましたがオケはそこそこの音量で、限界近くの叫びではありませんでした。

ペシェクはこの演奏で何を表現したかったのか、私にはさっぱり分かりませんでした。
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ハンス・フォンク/ハーグ・レジデンティ管弦楽団

フォンク
一楽章、軽いタッチの弦のトレモロ。第一主題も軽い演奏で、編成があまり大きくないような印象を受けます。第二主題もあっさりとした表現です。展開部の第二主題は繊細で美しい演奏でした。高域方向のレンジが狭いのか、鋭い響きは無く、丸い響きです。あまり深い表現をすることは無く、そつなくまとめている感じの演奏です。

二楽章、サラッとして爽やかな主題です。深い歌も無く、テンポも変化することは無く、とてもあっさりとしています。

三楽章、クラリネットが生き生きとした表現をしました。中間部の金管の強奏部分も熱くなるようなことはありません。とてもさらりと過ぎて行きます。ソフトなティンパニ。演奏にピーン張った緊張感を感じません。

四楽章、細身で生の声に近い独唱。これまでの楽章と違って、とても感情のこもった注意深い歌唱です。

五楽章、やはりあまり編成が大きくないような感じがする第一主題。遠くて良い雰囲気のバンダのホルン。抑揚の無い第二主題。展開部は少し熱い演奏になってきました。再現部冒頭も速いテンポであっさりとしています。非常に遠くから響くトランペットのバンダはとても良い感じです。清涼感のある合唱。くっきりと浮き上がるソプラノ独唱。独唱と合唱の和音もきれいに決まります。力強い男声合唱。クライマックスは合唱の強力なエネルギー感で壮大でした。

ほとんど無表情で淡々と進む音楽に違和感を感じました。しかし、最後は合唱のエネルギーに引っ張られるように壮大なクライマックスを築きました。ただ、表現としては特筆することは無く、ただ演奏しただけと言う印象は拭えません。
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Frederic Chaslin/エルサレム交響楽団

Chaslin
一楽章、響きは薄く、ゲトゲトした第一主題。録音もデッドなのか、第二主題もフワッとした膨らみがありません。展開部の第二主題も伸びやかさがありません。展開部の第一主題が現れる前はかなりテンポが速くなりました。そしてアンサンブルが乱れる部分もありました。細かなミスはたくさんあります。大きな表現も無く、精緻な演奏でも無く、何を聞けば良いのか分かりません。

二楽章、とにかく響きが薄いです。弦楽器に胴が付いていないような・・・・。テンポの揺れも無く硬直した演奏に感じます。

三楽章、ただ演奏されているだけで、何も表現や主張の無い演奏で、正対して聞くのは大変です。中間部のトランペットでテンポを速めます。その後アンサンブルの乱れがあります。最後の中間部の主題で盛り上がる部分で物凄くテンポを速めました。

四楽章、独唱も響きを伴わないので、生声のような感じで深みがありません。

五楽章、コントラバスをあまり拾っていないのも薄い響きにしている一因のようです。バンダも距離はありますが、響きはほとんど伴っていません。展開部でも全開にはなりません。このオケの編成と技量でこの曲を演奏しなければならなかったのか?と疑問を感じます。再現部冒頭は打楽器が炸裂してかなり全開に近い響きになりました。バンダのトランペットはステージ上にいるようです。合唱が音量を上げた時の声の伸びがありません。クライマックスでは合唱はほとんど聞えず、オケと独唱だけでした。

会場の問題なのか、オケの問題なのか、響きに厚みが無く、表現らしい表現も無い演奏で、このオケの技量と編成でこの曲を演奏しなければいけなかったのか疑問に感じました。
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アンドルー・デイヴィス/BBC交響楽団

デイヴィス
一楽章、こもったようなフワッとした主題。あまり感情を込めずあっさりと演奏される第二主題。モノラル録音て゜かなりナローレンジです。展開部の第二主題もあっさりとした表現です。再現部もナローレンジなので、色彩感に乏しく密度が薄く軽く聞えます。

二楽章、柔らかく優しい舞曲です。ナローな録音で表現などはあまり分かりませんが、深く感情を込める演奏には思えません。

三楽章、滑らかに続く主題。中間部のトランペットもとても穏やかに聞えます。

四楽章、テンポは微妙に動いています。最後はとてもゆっくりになりました。

五楽章、打楽器は炸裂しますが、金管が遠いので、激しさは感じません。かなり音量の大きなバンダのホルン。オーボエが少しテヌートぎみに演奏するのが珍しいです。展開部でも激しさは伝わりません。表現なども特徴などは全く分かりません。トランペットのバンダは距離があって美しい残響を伴って響きます。合唱は豊かな響きを伴って美しい感じがします。最後はかなりの盛り上がりになったような感じですが、この録音からははっきりとは分かりません。

ナローレンジで金管が遠い録音で、表情や盛り上がりが感じられない演奏になってしまいました。もっと良い状態で聞ければもっと違った感想になったと思います。
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ベルナルト・ハイティンク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団

ハイティンク
一楽章、速めのテンポでキリッと引き締まった第一主題。径の小さいシンバル。第二主題も速いテンポでちょっとぶっきらぼうな感じです。ハイティンクもまだ若く発展途上だったことをとても感じさせる演奏で、晩年のどっしりと重厚な雰囲気は微塵も感じられません。かなり腰高で、安定感がありません。展開部の第二主題も速くあまり美しさを感じませんでした。コンセルトヘボウらしい深みや美しさもあまり感じません。元々出来不出来の差が少ない指揮者ですが、この演奏はあまり良い出来では無い感じがします。表現が淡白で深みがありません。

二楽章、歯切れの良い主題。テンポの動きも僅かで、表現らしい表現はありません。作品のありのままを演奏するスタイルは現在と変わりませんが、深みや厳しさはありません。何かベクトルが揃っていないと言うか、散漫な感じがします。

三楽章、水面だけを波立たせているようなこの演奏から、どうやって現在のような深いところから大きな波がうねるような音楽ができるようになったのかとても興味深いです。この演奏を聞いているとハイティンクの経験によって積み重ねられたものの大きさを感じます。

四楽章、金管のコラールも薄っぺらい響きです。コントラルトの声質はちょっと変わっています。独唱の最後も神に召されるような神聖な歌唱ではありませんでした。

五楽章、ハイティンクの演奏にしては強く演奏する金管の第一主題。デッドで詰まった感じのバンダのホルン。第二主題は淡々としています。トロンボーンも素っ気無く味わいがありません。展開部はバラバラでオケの一体感は全くありません。とにかく演奏が軽い。この演奏を聞くと、コンセルトヘボウも良くハイティンクの成長を辛抱強く待ったものだと関心します。音量は大きめですが、爽やかな合唱。粘ることもなく淡々としたクライマックス。

現在のハイティンクの演奏の片鱗も見えない演奏で、とても退屈でした。
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ズービン・メータ イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団

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メータ二度目の「復活」今回はイスラエルpoとの録音。
前回のウィーンpoとの録音が若さ溢れる好演だったので、期待も大きかったのですが、世間の評判はあまり芳しくないようです。
果たして、実際にはどうなんでしょう?

一楽章、前回同様、気合のトレモロからスタート、テンポは速めです。前回のような豪快さは影をひそめ、フレーズ内の強弱の変化もあり、そんなに悪い演奏には今のところ感じません。
ただ、集中力が高いとか、凝縮された表現と言うような、緊張感につつまれた演奏ではありません。緩んだ雰囲気とか大味な演奏と言われてしまうような、空気は確かに持っています。
これは、メータの演奏によるところなのか、テルデックの録音によるところなのか?モタ~っとした響きが全体を支配しているのが、なんとも・・・・・・。
特に聞かせどころもなく、なんとなく流れていったかな、猛スピードで終った、ウィーンpoとは対照的にritして終った。

二楽章、悪くはないんだけど・・・・・・。若いころの突進力がなくなった分、緩急自在に濃厚な表現力が出てくるとかすれば良いんでしょうが、そのあたりがまだ中途半端な過渡期なのでしょう。

三楽章、最初から気になっているんですが、このデッドなティンパニがどうも演奏に溶け込まない。何か意図があってこの音なのか・・・・・。他の管楽器(特に木管)も音が短めに演奏されています。その上、ホールの残響をあまり拾った録音ではないので、短さが変に気になります。
表現も徹底されてはいないようで、緩い感じ。メータはロスpo時代の妥協のない明晰さをニューヨークpoで捨て去ってしまったのではないかと思います。
一人の音楽家として、心の中でどんなにすばらしい音楽が鳴り響いていようとも、指揮者となれば。それを他人に演奏させなくてはいけません。巨匠が君臨していた時代は、楽員に嫌われようが、喧嘩別れしようが、自分の音楽に妥協をしなかったし、そういう人だけが世界にごくわずか用意されている、巨匠の椅子に座ることができたのだと思う。それは100人vs1人の戦いでもあるわけで、自分が信じる音楽をやり抜く決意や迫力がなければ、緊張感の高い、感動を生む演奏はできないのではないかと思います。
その意味ではメータはニューヨークpoに、アバドはベルリンpoに腑抜けにされてしまったと思っています。
ムラヴィンスキーのリハーサル風景のCDを聴いたことがありますが、それは紳士的で穏やかな口調ですが、要求はものすごく厳しい、同じところを何度も何度も、時には一人で演奏させることも。それを聴いている私には、前と何が変わったのか分からないほど微妙な表現を徹底して練習していました。あのレニングラードpoを相手にですよ!
それに比べるとこの演奏はメータ自身の姿勢が甘すぎると思います。

四楽章、何もありません。何も起こりません。

五楽章、ffではアンサンブルの乱れもあり、メータにしてこのような乱れが聞こえていないはずはない!
元々ロスpoでは楽員ととてもフレンドリーな関係の中から積極性を引き出し、名演を残してきましたが、その手法は、それまでの暴君的な巨匠時代と決別する画期的な人物の登場だったから、オケも献身的な演奏をしたのだと思います。
今は、オケにムリを言わない指揮者ばかりになりましたからね。そこで差別化を図る何かを会得できれば、メータは本当に復活すると思います。
特に、何の感慨もなく、この楽章も終って行きそうです。合唱の弱音はとても綺麗です。弦の優しい響きもこのオケの特徴か、下品な金管との釣り合いもとれないオケです。
ffでの終結部でもTpなどクレッシェンドを限界のギリギリまでしていないです。本来の頂点の手前でやめてしまうんです。それほど、オケのメンバーには厳しい要求をしていないし、オケのメンバーも献身的に音楽をしようとはしていない。

これでは感動などありえないですね。残念な演奏です。

ヤノフスキ モンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団

ヤノフスキ
一楽章、軽い音で弦のトレモロが始まりました。その後も仰々しくならず、軽いタッチで演奏されています。金管や打楽器も奥まっていて、軽い演奏をさらに軽くしています。まるでサロン・オーケストラが復活を演奏しているような、BGMにでも使えそうな軽さです。テンポ設定などは普通なのですが・・・・・。
セレブたちはカッコ良くクールに復活を楽しみたいのか。バーンスタインやテンシュテットのようなコテコテの演奏を嫌うのでしょうか。どこを取っても美しい演奏ですが、これがマーラーか?とも思わせる演奏ではあります。
ミュートを付けたトランペットの音が大きく聞こえて、オープンでffを演奏するトランペットが遥かかなたにいる。何かミキシングで操作しているのか、変です。
ティンパニもffはデッドな音がして、pの時は残響を伴って長く尾を引く。
とにかく軽くて、耳障りが良くて、何も言うことはありません。セレブたちが好むマーラーはこんなんでしょう。作品と対峙するような感覚など全くありません。ものすごく遅くなって終わりました。

二楽章、ゆったりとしたテンポで暖かい演奏です。
モンテカルロでは、テンシュテットやバーンスタインなどは指揮台に上がってはいけないんだろうな。美女を隣にはべらせて、分かったような顔をしてクラシック音楽を聴く。そういうシチュエーションに合うような演奏じゃないと、この地では受け入れられないのでは?と疑いたくなるくらい、一般的なマーラー像からはかけ離れています。
ましてや、ロジェヴェンが指揮台に上がりでもしたら、演奏が始まったとたんに聴衆から総スカン、大ブーイングでしょう。
かの地では、濃厚な音楽をやってはいけないのです。多分!
どんな作曲家の作品であろうとも、BGMのように美しく。背景にあるものなど関係ない。

三楽章、予想通り柔らかいティンパニから始まった。ここではスチール缶をぶっ叩くような音ではダメなのだ。
とにかく、美しく聞こえることだけに腐心した演奏だとしか思えません。
その分、耳には優しいし、音楽と格闘することもないし、美しい音楽が流れて行くのに身を任せるようにするには、良い演奏です。
レヴァインの埃っぽい演奏を聴かされるよりずっと良いです。

四楽章、美しい独唱です。天国的な雰囲気は全体に漂っているので、この楽章は良い雰囲気です。

五楽章、リミッターでもかけているのでしょうか。金管の音は明らかに強く吹いているのですが、全く届いてきません。ですから、演奏全体のダイナミックレンジが極めて狭くなってしまっているのです。
バンダのホルンはすごく強く吹いていて、遠くにいるようで、なかなか良い効果があります。
ここまで、聴き進むと完全にBGMになっています。演奏については考えないで聞ける。バンダはとても効果的に配置されていて響きも気持ちいいです。
独唱もとてもゆっくりとしたテンポでムード音楽のようです。パイプオルガンが強めに響いて、豪華絢爛!

拍手もセレブらしく上品です。演奏からしても聴衆は熱狂するわけがありません。
まあ、こういった演奏もアリかなとは思えます。マーラーの精神性などは無視して、美しく聞かせることに徹してしまえば、いろんな効果を駆使している曲なので、割り切って聞けば不満はあまり感じません。中途半端な演奏より良いかも・・・・・。

ジュゼッペ・シノーポリ/RAI国立交響楽団

シノーポリ
一楽章、かなり荒削りな感じですが、凄みのある第一主題。速いテンポでグイグイと進みます。かなり速いテンポで金管も遠慮なく入って来ます。かなり荒っぽい第二主題。本当に遠慮の無い金管。展開部の第二主題もそれほど美しくはありません。速いテンポでかなり荒っぽい演奏で、叩き付けるような荒々しさです。後のフィルハーモニアとのスタジオ録音とはかなりイメージの違う演奏で、フィルハーモニアとの録音のような丁寧さはありません。なぜここまで速いテンポで煽り立てる必要があるのか理解できません。面白い演奏ではあるのですが、作品を真面目に正面から捉えた演奏とは思えません。コーダなどは落ち着いたテンポの演奏になるのですが・・・・・。

二楽章、テンポの動きの大きな主題ですが、なぜか野暮ったい演奏です。中間部はまた落ち着きの無い演奏になります。木管が独特な表現をします。テンポはとても良く動きますが、かなり強引な感じです。

三楽章、緩い感じのティンパニ。薄い弦の主題。ドタバタする大太鼓とルーテ。慌ただしい中間部。とにかく落ち着かない演奏です。最後の盛り上がりでティンパニが二打叩いた後が続きませんでした。

四楽章、中間部も速いテンポです。独唱も最後は絶叫するような投げやりな歌でした。

五楽章、強烈に絶叫する第一主題。離れたところから響くバンダのホルン。音が短く投げつけるような演奏です。金管のコラールも軽い演奏でした。展開部も音が短く丁寧な演奏には聞えません。打楽器のクレッシェンドの後も凄く速いテンポでした。とにかくテンポが速い。再現部もとても速いテンポでどっしりとしたところは全くありません。フィルハーモニアとの録音の時とは全く別人のような演奏です。再現部の後のフルートとホルン、トランペットが絡む部分はゆっくりでした。合唱が入ってからは普通に進みます。特に大きな盛り上がりも無く終わりました。

ひたすら速いテンポで投げつけるような荒削りな演奏で、全く落ち着きがありませんでした。その上クライマックスも聞かせ所は無く、全くと言って良い程良いところはありませんでした。フィルハーモニアとの録音とは全く別人のような演奏でした。
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ダニエーレ・ガッティ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団